イ・ジヌク

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2026.02.16

MEDIA

GQ KOREAインタビュー “僕は明日だけを生きます”


明日のイ・ジヌクは。
 




 

GQ 本日が、ひげを剃ることができ三日間のうちの一日だそうですね。
JU はい、初日です。違和感がありますね。鏡を見るたびに「あれ?」と。

GQ 撮影中の作品映画『エクストラクション:タイゴ(原題)』のためですか?
JU その通りです。ソウルでの撮影分は終わりまして、これから海外での撮影が残っています。

GQ 傭兵タイゴと対立する犯罪組織の一員という役どころで、イ・ジヌクさんは後者を演じられているのですね。
JU はい、悪いやつです。

GQ まだ撮影中とのことですので、詳しいお話は作品で拝見するとして、ひとつだけお聞きします。
『エクストラクション:タイゴ(原題)』の撮影中に冷水シャワーは浴びましたか?
JU 冷水シャワーは……できませんでした。撮影が始まってすぐにインフルエンザにかかってしまいまして。
三ヶ月近く苦しみました。冷水シャワーはしないほうがいいと、チャットGPTが言っていました。

GQ 実際に冷水シャワーがお好きなのですか?
「目を覚まして、自分を見失わないためにやっている」というお話が、本気なのか冗談なのか分からなくて(笑)
JU それはちょっと笑わせようと思って言ったんですけど(笑)でも冷水シャワーのメリットはいろいろあるみたいですからね。
あ!そういえば、アクションシーンの撮影後に冷水シャワーしました。でも、あの時はあまりにも寒くて3分も持ちませんでした。

GQ その時はなぜされたのですか?寒い日だったのに。
JU 激しいアクションや運動をして筋肉痛になった時、冷水が乳酸の分解を助けたり、痛みを和らげたり、むくみを取ったりすると聞きまして。

GQ やはり実用的な意味合いなのですね。
JU そうですね。気持ちもシャキッとします。弱くなっていた精神状態が、一気に目覚めるような。

 



 

GQ 今日はここ(ソウル近郊)の撮影場所に来る途中、まるで旅をしているような気分でした。
JU そうですよね?庭も素敵ですし。

GQ ここを無人島だとして、今日のイ・ジヌクさんの気分を込めた1曲を選ぶとしたら?
JUそれなら……X JAPANの〈Art Of Life〉がいいかな。
29分の曲です。とても長いけど、ほんとうに大好きです。夢中だった頃はこの曲を聴きながら寝ていました、高校生のとき。

GQ 高校生のときに好きだった曲なんですか?
JU はい。でも今日の天気にもすごく合っている気がして。

GQ 流しながらインタビューしますか?
JU イントロまではぜひ聴いてください。リーダーのYOSHIKIはドラマーなんですけど、
完璧主義者でレコーディングのときメンバーをものすごく苦しめたらしいです。最初のイントロの歌詞が本当に素晴らしいんですよ。

GQ どういう歌詞なんですか??
JU 「バラよ、なぜ君はひとりで咲いたのか」

GQ 音楽が好きなんですね。
JU 大好きですよ。音楽が好きじゃない人とは、話もしたくないですね。

 


 

GQ ジヌクさんの影響で来る途中に〈交響曲第七番 (ベートーヴェン)〉を聴きました。
JU いいですよね?

GQ 最高です。以前ジヌクさんが、現地でふと思い立ってベルリン・フィルの公演を観に行ったら、
ちょうどその日の演目が着信音にするほど好きだった〈交響曲第七番 〉だったというエピソードを聞いて、第三者の立場でも不思議で嬉しい気持ちになりました。
JU 本当にしびれる出来事ですよね。そのときベルリンで撮影したあと、ひとりで二日くらい残っていたんです。
そういえば、ベルリン・フィルがあったな?と思い行きました。そして演目を見て、え?僕の好きな曲じゃないかって。
すごく不思議じゃないですか。(公演を観るのに)必ずではないですが、きちんとした服と革靴を用意して行きました。その日はやけに寒くて。だからコートも買って着ました。
偶然入った公演で自分の好きな曲が演奏されるなんて。最高ですよ、本当に。

GQ〈交響曲第七番 〉は、どうして好きになったんですか?
JUもともと第二楽章の叙情的なところ好きなんです。第七番 は、昔の日本ドラマ「のだめカンタービレ」(2006)に出てきました。シーンはよく覚えていないんですが、とにかくその時に第七番が大好きになりました。

GQ 特に第二楽章が好きなんですね。深く入り込まないと出てこないような描写ですよね。
JUでも、交響曲の構成を勉強しようと思ったというより、自分の好きな部分を聴いていたら、ほとんどが第二楽章だったんです。初めて聴く人にとっては第二楽章がいちばん聴きやすいと思います。叙情的な旋律ですし。
聴いているうちに前後の楽章にも自然と耳が向くようになって、そうやって構成も理解できるし、全体の流れも分かるようになる。そういうところが面白いですよね。

 


 

GQイ・ジヌクという人間が、これまで歩んできた人生のある一章を締めくくるとき、記念品と呼べるようなものを一つ取り出すとしたらなんですか?
JUうーん。そういうことを考えながら生きているタイプではないので、その質問は僕には難しいですね。
物事にあまり意味を持たせずに生きているタイプなので。

GQそれは新作映画『失恋した人たちのための7時の朝食会(原題)』から借りてきた質問です。
作中では失恋の記念品を取り出しますよね。
JUそうですね。あの作品を撮りながらも、より感じました。自分はそういう人間ではないんだなと。

GQそうなんですね。
JU僕みたいな性格のほうが、ある意味では気楽かもしれません。
強いて言えば、たまに写真を見返すことはあります。「あの時期、もっと写真を撮っておけばよかった」と後悔することは多いです。でも結局、変わらないんですよ。今もあまり撮らないですし。

GQ特に懐かしく感じる時期はありますか?
JU特定の時期というより、ある瞬間ですね。
友人たちと過ごしたひとときとか。懐かしいというより年齢を重ねると、もう戻らない時間について考えることが増えるんです。
よく「時は流れる水のようだ」と言うじゃないですか。その言葉が実感として分かる年齢になりました。

GQ時の流れが本当に早いですよね?
JU本当に早いです。そして流れる水を見ると、やっぱり切なくなるんですよ。
水が流れていくように時間も同じです。一度流れてしまったら、二度と戻らない。

 



 

GQ数年前、ジヌクさんはご自身で「フィルモグラフィーがバラバラな俳優」とおっしゃっていましたね。
「そろそろ残りの時間をちゃんと使わないといけない気がする」とも。今後、どんな方向性で活動していきたいですか?
JUうーん。僕は演技を始めてもう20年くらい経つんですけど、ようやく少し分かってきた気がします。
演技が上手いか下手かは別として一人の人物を演じるとはどういうことなのか、ということです。
だからそういうことに気づき始めると、過去の作品を振り返ると後悔することもあるんですよね。
「もっとできたのに」とか「ああ、惜しかったな」という感情で整理される感じで。でも、それはそれでワクワクします

GQむしろですか
JUどのようにキャリアを築いていくか、というよりはただ「その瞬間をもっと楽しもう」と思っています。
作品はこれからもバラバラだと思いますけどね。

GQ無意味な質問だったかもしれませんね。そもそも人生は自分の思い通りになるものでもないですし。
JUそうですね。それでも作品くらいは、自分で少し調整したりコントロールしたりできる気もしますけど、僕はただ心の赴くままにやるタイプなので。

GQそういえば、ジヌクさんは「方向性」という言葉は使っていないですよね。
文脈から方向性という意味で受け取っただけで、実際にその言葉を使ったわけではないですね。
JUそうですね、方向性を持つなんて言ったことはないですね。

GQじゃあ、何を持っていきたいと思っていたんでしょうか。
JU何を持っていきたいのか…自分でも分からないです。

GQ方向性ではないんですか? そうは考えていませんか?
JUはい、方向性ではないです。そんなふうに生きてはいません。僕は明日だけを生きます。

GQ今日だけではないんですね。
JU今日だけではないです(笑)そこまではさすがに無理ですね。明日だけを生きます。
正直に言えば、一週間先くらいまでしか考えていません。理由は、自分が生きているか死んでいるか分からないからです。一週間先くらいまでを見ながら生きています。

GQ教えてください。一週間先だけを見て生きる方法を。
JU練習すればいいんです。死を身近に置くと、すべてのことに対して少し超然としていられるようになります。

 



 

GQ そうですね。時々、死について話すことがあると聞きましたが、そもそもどうして死を身近に考えるようになったんですか?
JU それは性格のようなものだと思います。以前、小説〈黒猫〉を書いたエドガー・アラン・ポーの随筆を読んだんですけど、彼が幼いころに書いた文章だったみたいで。
「世界を明るく見るのは難しい、僕は世界を闇として見る」といった内容でした。それがネガティブな印象ではなくて、人が世界を生きる視点にはいろいろあるじゃないですか。その視点を、私は死を通して見ているのかもしれないなと思うんです。ネガティブでも暗くもなくて。

GQ 明日死ぬかもしれないから、今日を一生懸命生きよう、みたいな感じですか?
JU 簡単に言えばそうかもしれません。でもそれはちょっと極端で(笑)
うーん……その逆の側面から世界を見ている感じです。大切さについて。
死というものを考えると、終わりじゃないですか。来世は分からないし、死んだら本当に断絶です。
それを考えると、少しは心が落ち着くこともあるんです。生きている中で経験することについて。

GQ だから大切だと。
JU そうです。死んだら終わりですから。

GQ “声を枯らして泣く”という台本の指示や、“とても幸せそうにする”という指示は難しいと言っていましたね。
JU 今でも難しいです。でも“声を枯らして泣く”よりも、“とても幸せ” “感激する”、これが本当に難しいです。
僕は感情がそこまでいったことがない気がするんです。普通の人が表現するほど、経験したことがない。
「そんなに嬉しいことがあるのか?」みたいな感覚です。
「そこまで?」って。本当に難しい問題です。

GQ 演技を離れて、イ・ジヌクという人間は“そこまで”ではないんですね。
JU そうです。一般的にあんなふうに表に出して表現する人間ではないです。感激したり嬉しいことはあるんですけど、わざわざ……。
そう表現しなければならないキャラクターやシーンがあるじゃないですか。それは難しいです。

 



 

GQどうして自分がそういう人間だって、断言できるんですか?
JUたくさん悩むからです。客観的に自分を見始めると、分かります。
俳優はそれを訓練して、試す人でもありますから。他のキャラクターを演じながら、自分を探るのが仕事でもあります。
そうしているうちに気づくんです。僕は他の人より感情を表すラインが低い人間なんだと。
なので周りは、僕が何もしていないときの様子を見て「機嫌が悪いのかな?落ち込んでるのかな?」と思うかもしれません。

GQでも今日、現場を引っ張るジヌクさんを見ていて、感情をよく表す人だと思いましたが。
JUそういう風に見えることもあります。

GQでも基本的には…。
JUええ、その姿が基本ではないんです。人と接する時には、すでに別の状態になっていますから。

GQ実はずっと気になっていたんですが、あの漫画は〈今日のジョー〉ですか〈明日のジョー〉ですか?
韓国語訳では〈ハリケーン・ジョー〉ですよね。
それがイ・ジヌクさんの感性の基盤になった作品のひとつだと聞いています。
JUああ、〈明日のジョー〉ですね。そうです。

GQ僕のように〈明日のジョー〉を見たことのない人のために紹介するとしたら?
JU壮絶な人生を生きた男の話です。壮絶というのは不幸だったという意味ではなく、
人生そのものを真剣に、純粋に、全力で生きた男の物語です。

GQいつごろ見たんですか?
JU2000年代初めくらいですね。

GQ結構、大人になってから見たんですね。
JUそれ以前は日本の文化輸入が禁止されていたんです。昔はそういう時代がありました。

GQ感性の基盤になった作品なら、もっと幼い頃に見たものだと思っていました。
JUそれ以前は…ああ、この話をするとまた長くなってしまうんですが。
僕はどこか乾いた人間で、こうして世の中に出て社会のさまざまなものを受け入れ、感情が育っていく中で、
こういう作品を見ながら大人になったんです。今の人たちには理解しにくい感性かもしれませんね。

 



 

GQ〈明日のジョー〉と出会い、ジヌクさんの感性の基盤、また大人として糧となったものは何ですか?
JU自分の追い求めるものを、あれほど純粋に最後まで追い続けるのは簡単なことじゃないんですよ。
今の時代はなおさらです。誘惑も多いですし、楽になりたくもなるでしょう。
でも自分の目標を達成するために、すべてを燃やし尽くすんです。
自分自身を燃やし尽くす。結局、主人公は死んでしまうんです。本当はやめていれば死なないのに。

でも彼は「自分は戦うために生まれてきた、戦うんだ」と最後までやり抜くんです。
チャンピオンを倒すために。チャンピオンになることが目的ではないんです。
最強のボクサーを倒さなきゃいけないんです。けれど結局、倒せないんですけどね。

GQああ。
JUそれで成り立っているんです。死ぬその瞬間まで挑戦する人だったから。
だからといっておすすめはしません。こんな生き方はしてはいけません、今の時代は。

GQどうしてですか?
JUダメですよ、ダメです。若いうちに死んでしまったらどうするんですか。

GQ真剣に、全力でやることは重要じゃないですか?
JU僕はおすすめはしません。僕は俳優だから、こういう感性を感じて共感しながら演技で回収するわけであって望ましい生き方ではないです。

GQどうしてタイトルがこんなにややこしいのでしょうか?〈今日のジョー〉ですか?〈明日のジョー〉ですか?
JUはははは。〈今日のジョー〉はちょっと変ですよね。やっぱり「明日」。
明日は生きなきゃいけませんから。

 



 

写真提供:GQ KOREA
出処:https://www.gqkorea.co.kr/?p=355701