イ・ジヌク

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2025.07.30

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ESQUIREインタビュー“「エスクワイア」が他の法廷ドラマと違う理由”

ジヌクとチョンチェヨンが語る、JTBC「エスクワイア」が他の法廷ドラマと違う理由

法廷ドラマ「エスクワイア」で帰ってきたイ・ジヌクとチョン・チェヨンに会った。冷徹な完璧主義のチーム長と、全国ロースクール模擬裁判大会で優勝したルーキーをそれぞれ演じた二人だが、痛快な瞬間よりも“二項対立では判断できないこと”に焦点を当てた作品にしたいと語った。



Qお二人、仲がいいんですか?

イ・ジヌク以下仲いいですよ。“仲がいい”という概念の定義が必要かもしれないけど、少なくとも僕の基準では仲がいいです。

チョン・チェヨン(以下:チョン私の基準でもそうです。

Q:今回の作品で初対面だと思っていたのですが、インタビューの準備中に、数年前にチェヨンさんがSNSにジヌクさんやハン・ジミンさんと一緒に面白い表情で写っているセルフィーを上げていたのを見つけました。

チョン:あれは実は、会社のワークショップで撮った写真です。あのとき、先輩の“マニト(秘密の友だち)”が私だったんですよ。私のマニトはジミンさんで。マニトと自然にセルフィーを撮るという小さなミッションがあって、そのとき撮った写真です。「あ、今だ!」って思って皆で撮りました。(笑)

イ:世代は違うけど、“犬”という共通の関心があるので話は合いますね。どうやって育てているかとか、よく話します。それ以外だと、僕が色々聞くほうですね。最近何してるの? 今の若者は何にハマってるの? って。(笑)

Q:さっき撮影中に、ジヌクさんがチェヨンさんに何かジェスチャーをしてましたね。あれは?

チョン:(笑)最近流行ってる“イライラチャレンジ”っていうのがあって、それを後で一緒にやろうと説得してたんですよ。それを見せてくださったんです。

Q:練習の中間報告みたいな感じだったんですね。うまくいきそうでした?

チョン:はい、すごくお上手でした。

イ:悪くはなさそうですよ。(その場で動きを披露)

Q:伴奏もないのに目の前でやってくれるとは。(笑)

イ:僕、頼まれたら何でもやりますよ。ただし面白くないだけです。(笑)

チョン:先輩、すごく面白いんですよ。おかげで撮影現場も本当に楽しかったです。

Q:チェヨンさんから見たジヌクさんの“面白さ”ってどんな感じですか?

チョン:うーん……(考えて)どう表現すればいいかな。話しも面白いし。あ、先輩ってリールとかよく見てますよね? 話してると最新のトレンドにすごく詳しいってわかります。

Q:誤解される部分もありそうですね。さっきスタッフに“嫌関”という言葉を使ったら「ジヌク先輩は多分その意味知らないですよ」って言われたんですよ。

イ:それは知りませんでした。

チョン:私も知りません。嫌関って何ですか?

Q:(笑)意外と知られてないんですね。“嫌悪関係”の略で、テ・ジナさんとソン・デグァンさん、パク・ミョンスさんとチョン・ジュナさんみたいに、ケンカしながらも相性のいい関係に使われるんです。「この作品、嫌悪関係の宝庫だね」みたいな感じで。

チョン:「エスクワイア」のユン・ソクフンとカン・ヒョミンみたいな関係ですね。

イ:ある意味そうだね。でも実際はユン・ソクフンが近寄りがたい人物だからっていうのもあるかな。

Q:ユン・ソクフンは、大手ローファームの訴訟チームのチーム長であり、エースですよね。冷徹な完璧主義者だけど、職場では雑談ひとつもしない冷たい人物として描かれています。

イ:そうなんです。でも、普通、人ってひとつの色だけを持っていることってないじゃないですか。もし誰かが冷たく見えるとしたら、そこにはきっと理由があると思うんです。僕が演じるユン・ソクフンは、まさにそういう内面がよく見えるキャラクターだと思います。表現の仕方や仕事の進め方は冷静に見えるかもしれないけれど、その裏にははっきりとした論理があるんです。自分の信念もあるし。それに動物をすごく愛していて、もしかしたら人間よりも動物の方が好きなんじゃないかって思うくらい。だから、第一印象とは違って、もっと多彩な魅力を持ったキャラクターですね。

チョン:(ユン・ソクフンは、)ぱっと見はすごく非人間的なように見えるけど、実は一番人間らしい人かもしれません。

Q:カン・ヒョミンは、全国ロースクール模擬裁判で優勝した期待株の新人でありながら、社会人としてはまだ未熟で、空回りしたり気持ちが先走ってしまう一面があるキャラクターですよね。ティーザー映像では「チョン・チェヨンにぴったりだ」 という反応が多かったですよ。

チョン:そうなんですか? 実は私、すごく心配してたんです。本当に。大げさじゃなくて、ものすごく不安でした。私はまだ出演経験も多くないですし、特にこういう専門職の役を演じるのは初めてだったので…。それでも「よく合ってる」と思ってもらえたなら、本当にありがたいです。

イ:僕たちはもうカン・ヒョミンだけを信じてますから。

チョン:えっ、そこまでは…(笑)

イ:僕たち、最初の台本読み合わせのときから、口をそろえて言ってたんですよ。「本当によく合ってる」って。正直、まだ俳優チョン・チェヨンのデータは多くないから、みんな表立っては言わなくても気になってたと思うんです。でもいざ一緒にやってみたら、すごく上手くて。チェヨンさんは、ドラマの人気とは関係なく、今回で新たな評価を得るんじゃないかと思います。業界関係者にも、視聴者にも。読み合わせも良かったし、でも撮影が始まったら…いや、ダメだ。このままじゃいけないな。期待値を上げすぎるのはよくない。
 


Q:いきなりですか?(笑)

イ:いやいや、一番よくあるマーケティングミスじゃないですか、それが。僕たちは実際に撮影をしてきて、「観たら驚くはず」と思ってるんですけど、そうやって期待を煽りすぎて、うまくいった試しがないんですよ。作品そのものを見てもらえれば、自然と感じてもらえるはずです。

チョン:(笑)現場でも先輩方が「ヒョミン、ファイト」ってよく声をかけてくださって、それがすごく印象に残っています。本当に力になったし、ありがたかったです。

Q:カン・ヒョミンは、まだ不慣れで気持ちが先走る新入社員ですが、一方では優秀な新米弁護士でもありますよね。その二面性を演じるには、ある程度の計算が必要でしたか?

チョン:「エスクワイア」の副題が「弁護士を夢見る弁護士たち」なんです。夢見ていた弁護士という職業に就いたけれど、それでもなお弁護士という理想を追い続けているんですよね。実際、誰でもそうじゃないですか。俳優になった後も、俳優を夢見続けるように。ヒョミンも一生懸命勉強してきて、社会に出てぶつかりながら、感情が先に立ってしまったり、物事を客観的に見るのが難しい瞬間があったりして、そうやって一つひとつ学んでいくキャラクターだと理解しました。二面性として分けて考えてはいなかったと思います。

Q:ユン・ソクフンも「弁護士を夢見る弁護士たち」に入ると思いますか?

イ:僕としては、そうだと思います。法曹界は、法律や公共の秩序、社会正義を扱う職業ですよね。でも弁護士という立場になると、そのなかでもちょっと曖昧な部分が出てくると思うんです。正義だけを追いかけるとは言い切れない。結局のところ、クライアントを弁護するのが弁護士の役割であり、クライアントの言葉を信じることが彼らなりの正義になる。でも、だからこそそれを可能な限り社会が共有する正義に近づけようと努力してこそ、社会に貢献できる人間になれるんじゃないでしょうか。

Q:弁護士という職業についていても、自分が理想としていた弁護士像になるのは、やはり簡単なことではないんですね。

イ:もちろん、現実の弁護士の人生にはまた違った側面もあると思います。最近はドラマの描写と現実のギャップがだいぶ狭まってきたとはいえ、ドラマや映画にはそれぞれが目指す価値がありますからね。作品の中で理想的な事件や結末ばかりを描いてしまうと逆に反感を買ってしまうし、かといって現実の深い部分だけを描けばディストピアになってしまう。僕はこのドラマのそういった面がよかったと思っているんです。善と悪の明確な境界がないケースを前に、登場人物たちが悩みながらも賢明に解決しようとする、その過程で多様な視点が得られる構成になっていて。

チョン:その通りです。毎話さまざまなケースが登場しますが、それを「これが正義だ」と法律だけでスパッと解決することはないんですよ。実際の訴訟でも、そんなに単純に判断できることって少ないと思うんです。お互いの事情が複雑に絡んでいるから。私も、どちらにも理由があって、どちらも気になって目を向けてしまう、そういう視点を持たせてくれるところがこのドラマで一番好きな部分です。

Q:法廷ドラマの最大の難所とも言われるセリフ量は、いかがでしたか?

イ:(笑)

チョン:セリフ量…(笑)

Q:お二人とも、考えただけで笑ってしまうほどだったんですね。

イ:実は僕はまだマシなほうでした。経験豊富な弁護士の役なので、別の方法で表現される場面も多かったですから。でも、ヒョミンはその賢さやひらめきを、すべてセリフで表現しなきゃいけなかったから、本当に大変だったと思います。あんなに分厚い台詞が、8ページもずっと続くんですよ。途中に他の人のセリフも一切なくて。

チョン:(笑)最初のうちは本当に大変でした。量もそうですが、普段使わない表現がとにかく多くて。聞き慣れない言葉ばかりだから、他の言葉に置き換えることもできないんです。自然と「えっと、何でしたっけ?」みたいになっちゃって。でも読み続けるうちに、だんだん意味がわかってくるんです。今でも難しい単語ばかりですけど、何を言おうとしているのかは入ってくるようになって。だから、読み込んで、意味を理解して、単語を覚えて…その繰り返しでしたね。

Q:聞いていると、ただセリフを覚えるだけでは足りないんですね。その内容を自分のものにして、その場面に合った感情をのせて発しなければならないから。

イ:普通「セリフを覚える」と言いますけど、実際には口の外に出さないといけないんですよね。いくら完璧に覚えていても、それがそのキャラクターの口に合っていなければ、ただセリフが流れていくだけ。覚えていないのではなく、“自分のものにできていない”状態なんです。

チョン:だから私は暗記ももちろん大事にしましたけど、それよりもまず生活サイクルを変えたんです。夜10時に寝て、朝8時に起きる習慣を撮影に入る前からつけておきました。

イ:(嬉しそうに)お酒もやめたよね?

チョン:(笑)はい。「作品が全部終わったら、美味しい一杯を飲もう」って決めて、きっぱり断ちました。お酒を飲むと、日中も少しボーッとしたり、覚えていたことを忘れちゃったりすることがあるじゃないですか。それで生活リズムを変えて、朝早く起きて台本を読む習慣をつけたんです。親がよく「早寝早起きしなさい」って言いますけど、あれってちゃんと理由があるんですね。頭が冴えて、よく覚えられるようになりました。

Q:今こうして笑って話せるのは乗り越えたからこそだと思いますが、最初にこの作品を選んだとき、怖くはなかったですか?初期の台本でもその大変さは伝わってきたはずですよね。

チョン:もちろん心配はありました。でも私、いつもこういうマインドを持っているんです。「これどうしよう…」って思っても、「その日の自分がなんとかしてくれるでしょ」って。

イ:僕なんて、本当に諦めそうになったんですよ。こんなにセリフが多い役を演じるのは初めてで、何をどうやっても覚えられない時期があって。最初は本当に恐怖感を感じました。でも相手役のヒョミンがあまりにも上手くやってくるから。本人には言えなかったけど、余計にストレスで。(笑)友だちが脳のサプリメントを買って送ってくれたりもしました。僕があまりにもしんどそうだったから。

チョン:本当に。受験生みたいに“記憶力アップの漢方”みたいなものにも、思わず目が行っちゃって。「あれって本当に効くのかな?」とか思ったりして。(笑)

Q:お二人とも思いの丈を語ってくれたところで、ちょっと意地悪な質問をしてみたくなりました。次にまた法廷ものが来たら、出演する気はありますか?

イ:僕たちはもし「エスクワイア」のシーズン2が制作されることになったら、出演するつもりです。

チョン:先輩も監督もまたやるってなったら、私も絶対に出ます。
 


Qわあ。そんな即答が返ってくるとは思いませんでした。やっぱり現場が良かったからでしょうか?それとも作品が?

イ:どちらもですね。まず現場が大事なんです。セリフを覚えるのがいくら大変でも、それは結局自分が頑張れば解決できる問題じゃないですか。でも現場がつらかったら、自分の力ではどうにもならないことが多いんです。僕たちにとって撮影現場って、ずっと過ごす職場であり、人生そのものですから。作品として残る分量は、実はあれだけ多くの人が時間をかけて努力したことに比べたら本当に少ないんです。結果として残らなくても、ぶつかり合って演技をつくり上げていく過程そのものが大切なんですよ。

チョン:私は今まで同年代の共演者と演じることが多かったので、こうして先輩方と一緒に作品をやるのは初めてだったんです。だから緊張もしていたんですけど、さっきも話したように、皆さんがただすれ違う時にも「ヒョミン、ファイト」って応援してくださったんです。翌日に重要な法廷シーンがあるとなると緊張するじゃないですか。「自分のせいで皆を待たせたらどうしよう」みたいな。けど今思い返しても、そういう類の緊張はなかったです。本当に皆さんがリラックスさせてくださったからだと思います。尊重があふれる現場だったと思います。

イ:ヒョミンはどこに行っても愛されるタイプですよ。

Q:チェヨンさんのことをずっと“ヒョミン”と劇中の名前で呼んでいますね。

イ:そうですね。まだ作品が終わっていないからかな。(※このインタビューはドラマの最終撮影の前日に行われた)

Q:チェヨンさんは、もう明日にはヒョミンとお別れですね……って、どうしてそんなに嬉しそうに笑ってるんですか?「シーズン2は絶対やる」って言ってた方とは思えないくらいですが。

チョン:(笑)これはですね、大学入試が終わった気分なんですよ。まさにそんな感じです。でもまあ、シーズン2があるなら当然やりますよ。

Q:お二人が感じたこのドラマの最大の魅力とは何ですか?

イ:僕たちのセリフの中にこんなのがあるんです。「人は傷が限界に達すると訴訟を考える」。でも法律でさえ、その傷を癒すことはできないんですよ。癒せたとしても、あまりにも多くのものを失います。たくさんの時間とお金を。ドラマの中でもさまざまなケースが登場しますが、すべて傷に関する話です。悲しい話も、腹立たしい話も多いですが、観る人の中には癒される方もいるだろうと思いました。毎エピソードに登場するゲストたちも本当に素晴らしい演技をしてくれました。

チョン:ある意味、愛の物語でもあります。本当にいろんな形の愛が出てくるドラマです。人がどうやって傷を負い、どう癒されていくのか、そういう部分に注目して観てもらえると面白いと思います。

イ:もちろん、癒されないこともあるけど、それが僕たちの生きる現実ですよね。受け入れて、乗り越えるしかない。個人的には「エスクワイア」 は他の法廷ドラマに比べてすごく人間的な作品だと思ってます。その点が一番の魅力なんじゃないかな。
 


写真提供:ESQUIRE
出処:https://www.esquirekorea.co.kr/article/1885061